kushami

kushami project
http://kushami-project.com/
有名なアメコミ映画のヒロインがこんなことを言っていた。
「人の本性は言葉でなく行動によって表れる」
くしゃみするみたいに突然クシュン、と、豪快に、爽快に。
気持ち良いことを素直にやる。みんなの楽しい人生をもっと楽しくしたい。
良いものを良いと、好きな人に好きだと、かっこいいものをかっこいいと伝える。

2011/02/06

珈琲、春の匂い

そして、季節が動き出し、春の匂いにふれた。

先週までは春になるなんてウソだろと思っていたけれど、
今日はまさかの短パンで街の中へ飛び込んでいた。
春が、少しずつ近づいてきている。


フォトコンペに応募する写真を選ぼうといつもの名古屋駅の地下の珈琲店へ向うと
今日は異様に混雑していて、中に入るのに15分程待つはめになった。

やっと座れた、と思ったら、今度は周りの女子の多さに圧倒される。
絶対この人々の大半は珈琲を飲みにきたのではなく、友人とおしゃべりをしにきたのだろう。
でもよく考えたら珈琲を飲む目的で珈琲店にくる人のほうが少ないのか。


自分から見て右の4人席に無理矢理5人詰めて座った女子大生グループが
なにやら今週末に行く香港への旅行の話をしている。
あーでもない、こーでもないと次から次へと思い思いのプランを話し、最後には
韓流アーティストで誰が好みかで揉めていた。
今からでも行き先を変更して韓国旅行にしてみてはどうか。

僕はそこで鞄からiPodを取り出し、電源を入れた。



注文したアメリカンコーヒーが運ばれてきたと同時に左のテーブル席に30代のミセス2人組が座った。

自分の斜め対面に座った女性は、特に記憶に残るような女性ではなかった。可もなく、不可もなく。

驚いたのはもう片方の女性だ。

自分の左隣に座ったミセスは透き通るような水色のスカーフを首に巻き、右手の人差し指に
グッと色を閉じ込めたような深いゴールドの指環をつけていた。
首に巻いている水色と指環のゴールドのコントラストだけでその女性の美的感覚が素晴らしいことは
明らかだった。
何気なく視線を目の前のアメリカンコーヒーから左隣のそのミセスに向けると、ちょうど目が合ってしまった。
小さすぎず大きすぎない目の大きさ、鼻は高くはないがおさまりの良い形。髪型はマッシュルームカットだった。
30代でこのような髪型にするのは本当にセンスがある人じゃないとそうできっこない。

このままジロジロ見ていてはただの不審者になってしまうので
すぐに顔を元の位置に向き直し、テーブルの上の自分の写真に視線を落とす。




すごく良い写真ね、

イヤホンから流れる音楽の外側から、そんな風に聞こえた気がした。


耳からイヤホンを抜き、もう一度左を向いた。
隣のミセスが笑顔でこちらを向いていた。

「すごく良い写真ね」

今度は確実に聞こえた。



「ありがとうございます。」
そう返事をし、そこでミセスとの会話は終わった。

別に、その女性に惚れたとかそういう話ではなく
ただ純粋にそんな美的感覚に優れている方に、しかも自分よりも年上で、多くの経験を
している(はずの)方にそういう一言をかけてもらえたことに嬉しさと自信を感じることができたのだ。

これ以上でもこれ以下でもない、ごく一般的な日曜の珈琲店での話。

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